そばと蒸篭(せいろ)

子供のころ、親に連れられて初めておそば屋さんに入った日のことを今でもはっきり覚えています。
おそば屋さんといっても、定食・丼・麺類一式取扱っている・・・そう食堂なんです。
懐かしいですね。暖簾をくぐって中に入ると、だしの匂いがぷ〜んと鼻をつく。 お品書きを見て、何を注文しようか?
天ぷらうどんも食べたいな、ラーメンも食べたいし、・・・カツ丼も・・・ってなことになる。
幼かった私にもラーメン、うどん、そばは、どういう食べ物かは分かっておりました。
でも、ざるそば?・・・いったいどういう食い物だろう?・・・そばには違いないだろう?・・・と思ったものです。

はぁ〜い!ざるそば一丁!!
「ざ・る・そ・ば・・・?」

自問自答を小声で発した時、店員さんが大きな声で言ったのでした。

「はぁ〜い!ざるそば一丁!!」

それが、私とざるそばの最初の出会いだったのです。
四角い蒸籠(せいろ)に盛られたそばを見た時、やったぁ〜!ざるそばにして良かったと内心にんまりしたものでした。 てっきり二段になっていて、竹で編んだスノコをめくれば、蒸籠(せいろ)の底までそばが盛られていると思ったのです。 食い意地がはっていたんですね・・・お許しください。

今でもハッキリ覚えています。おいしかった!!そして、ちょっとガッカリしたことも・・・

これが、私とざるそばの運命的(・・!?)な出会いであったのですが、・・・でも私だけでしょうか?
子供のころ、私のように食い意地がはっていたいないは別にして、 蒸籠(せいろ)に敷いてあるスノコをめくってみた記憶のある人は、ずいぶんいらっしゃるのではありませんか?

ところで蒸籠(せいろ)といえば、皆さん不思議に思われたことありませんか?
もりそば、ざるそば、せいろもり・・・こういったそばは、どうして蒸籠(せいろ)にもられて出されるのでしょうか?

そばが今のように細く切られて食べられるようになったのは、江戸時代の初めころなのだそうです。
当時は「そば切り」と呼ばれて、大変人気があったそうです。
当時のそばは、今と違ってつなぎに小麦粉を用いることを知らなかったために、めんが短く切れやすかったのです。
ですから、いったん切ったそばを蒸籠(せいろ)にもって、しばらく蒸した後にゆでたというわけです。
後に小麦粉をつなぎに使用する打ち方が一般に普及しても、蒸籠(せいろ)にもることは、そのまま残ったのでしょう。

先人が苦労の末に生み出した知恵の名残り・・・それが今日の蒸籠(せいろ)もりに息づいているのですね。



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